専門家会議の「関空陸上ルート」
容認報告の発表にあたって

1998.5.7  日本共産党阪南地区委員会

1. 関空の飛行経路について検討してきた大阪府の「専門家会議」は5月6日、運輸省の示した「環境面の特別の配慮」が誠実に実行されれば、「居住地域に及ぼす環境影響は最小限にくい止めることが可能」と、「陸上ルート」導入を容認する最終報告を知事に提出した。

  専門家会議が、飛行経路の問題は「地元が空港建設に同意した基本に係わる問題」と言いながら、1回も直接地元住民の意見を聞くことなく、結局運輸省の主張を全面的に容認したことは極めて遺憾であり、強く抗議するものである。

2.今回の最終報告について、多くの疑念を持たざるを得ない。
(1)関西国際空港は、「陸域は飛ばない」という変更が許されない「前提条件」のもとで建設されたにもかかわらず、専門家会議は「事情が変わった」という運輸省の説明を受け入れて検討された。
  「前提条件」の変更の上でこうした検討が許されるのかどうか、まず、地元の意見を求めるべきではないか。

(2)また専門家会議が「前提条件」の重要性を認識しているのだとすれば、「海上ルート」を堅持した上での混雑解消の方途を追求するのが当然の責務ではないか。

 (例えば「総合的な取り組み」で示された、着陸機の調整地点のマヤポイントへの移動。離発着機の交錯を避けるためのコースの分離。管制官の増員などによる空路への乗降処理能力の増強などは、「海上ルート」を前提に検討可能ではないか。さらに、2本目の滑走路が出来れば「陸上ルート」なしでも18万回可能と運輸省は回答していた。それならば『3カ所での混雑』は限界ではないのではないか………など)

(3)専門家会議は、関空が「国際ハブ空港」を前提として建設されたかのように認識し、そのために『増便』を絶対条件として検討されている。

  しかし、「国際ハブ空港」などという議論は、建設当初にはなく、80年代半ばから関西財界が主張し始めたものである。その上、「ハブ空港」とは元来どんな機能を持つ空港なのか、日本に複数の国際ハブ空港が必要でかつ存在可能なのか、関空が国際ハブ空港足り得るのかなど、納得できる議論なしに、これが前提であるかのような検討は、はたして科学的根拠を持っているのか。

(4)運輸省の示した「特別の配慮」が実行されれば、「環境影響は最小限にくい止めることが可能」と述べている点についても、重大な疑問を持たざるを得ない。

  開港以来多数の苦情が寄せられていたにもかかわらず、今回「特別の配慮」だと称して示されている措置を何故とらなかったのか。「航空路誌(AIP)に記載するので高度の確保は可能」と言うのなら、AIPに記載されているにもかかわらず岬町付近で何回も生じているコース逸脱が、何故防ぎ得なかったのかなど、を追及すべきではないか。

  (運輸省の態度の根底には、「WECPNL70以下だから問題なし」との考えがあり、だからこそ「特別の配慮」と恩着せがましく述べているのだと考えざるを得ない。)

(5)騒音問題は、開港にあたっても相当回数テスト飛行が行われ、「問題なし」とされたにもかかわらず、開港後多数の苦情が発生していることでも明らかなように、2回のテスト飛行で「容認」の結論が得られるようなものではない。

  現に専門家会議でも「騒音は機器が判断するものではなく、人間の感覚だ。従って苦情の有無がクリアーしたかどうかの基準」「1回や2回でなく、長期のテストとそのデータの蓄積が必要」などの意見が出されていた。こうした議論はどうなったのか。

3.いよいよ問題は地元に移される。9市3町で今日も生きている「陸上ルート反対」「約束を守れ」の議会決議を大切にし、圧倒的な住民の世論を結集することが必要となった。

(1)とりわけ直接住民の意見を聞く機会は皆無に等しい状況に置かれている。
 (この間一部で町会長を集めて「説明会」が開催されているが、そこでも「質問のみで、意見は受け付けない」との対応であった)
  最終的な判断は住民が行うべき問題であり、住民が判断できる場をつくるのは当然である。

(2)環境基準条例によれば、第1種住居専用地域の「良好な環境」を維持するために、昼間でも50デシベル以下と定められている。
  航空機騒音には、別基準が適用されるが、新たな環境破壊に対し、住民の生命・健康を守る自治体として、約束違反の「陸上ルート」に反対するのは当然のことである。

  日本共産党阪南地区委員会は、「陸上ルート反対3者連絡会議」に結集する諸団体をはじめ多くの地域住民とともに、真に住民の声が反映され静かな泉州の空が守られるよう引き続き全力をつくすものである。

                                          以 上