[専門家会議委員各位への、
            陸上ルート反対三者連絡会議からの見解本文]

                           1997年7月23日



地元合意(海上ルート堅持)尊重の立場での検討を

−運輸省“提案”(6/16)の検討をはじめる
にあたっての三者連絡会議の見解−


 運輸省は、去る6月16日専門家会議の「中間まとめ」(5月28日)に基づく「大阪府の見解」(6月3日)を受けて、「飛行経路の現状と問題点について一定のご理解を得られた」として「関西国際空港の飛行経路問題に係る総合的な取り組みについて」なる文書を3府県に提示、7月7日には専門家会議に対してもその内容説明を行った。いよいよ始まる「陸上ルート」案についての専門家会議の具体的検討を前に、その検討内容が、「ルート問題」の推移に重大な影響を与えることが推測される故に、孫子の代まで大きな影響を受ける地元住民として、重大な関心を持たざるを得ない。もちろん、専門家会議の委員各位が、この半年間それぞれの専門的立場から、積極的に検討をすすめてこられたことは、傍聴して、あるいは報告文書によって充分承知している。その上にたって、今後とも「公害のない空港」であり続け、「地元との共存共栄」が貫かれるため、また「情報公開」「住民合意」の立場で納得のいく検討をいただくため、若干の見解を表明するものである。


1、空港建設にあたっての「地元合意」について

 昨年7月23日付け運輸省の「現状と問題点」をめぐる論議は、大阪府等の文書質問、専門家会議の席上での口頭質問、これに対する運輸省回答などでも明らかなように、「3点セットで示された基本的な考え方を守る」ことが確認され、それを前提にすすめられているように思われる。
 しかし、「3点セット」をめぐる当時の地元自治体・議会と運輸省との質疑応答は、「基本的な考え方」は当然のこととし、その考え方に基づいて設定され、図示された「海上飛行ルート」が、様々な条件のもとでも陸上にかかることはないかどうかを巡って行われたのである。これに対して運輸省は、「陸域上空を飛行しない」と疑問の余地なく回答した。つまり、「地元合意」の核心は、「海上ルートを守る」「陸上は飛ばない」にあったことは明白である。このことは、地元自治体と運輸省との当時のやりとりをまとめた「資料」で明らかであるが、さらに念のために追加するならば、大阪府自身も、1981年6月発行のパンフレット「関西国際空港はいま…」において「府域では、陸域上空を飛行しないことになっています」と府民に向け約束・宣伝したこと、地元自治体が陸上ルート問題が浮上するたびに、これを「約束違反」だと指摘し、「海上ルートを守れ」と決議したことにも示されている。(9市3町で決議)
 しかも強調したいのは、この「合意」は、単なる「約束」ではない点である。もし当時、今のように「市街地に騒音をおよぼさない」「努めて海上を飛行し、低高度では陸域上空を飛行しない」「これが3点セットの内容だ」と説明していたとしたら、関空建設そのものがあり得なかった、そのような「重み」のある約束、関空建設そのものの是非にかかわる確認だったのである。従って絶対にあいまいに出来ない約束、関空建設の原点なのである。

 こうした約束の「重み」は、私どもの一方的解釈でない。例えば、1984年4月17日第41国会衆院運輸委における参考人陳述で、当時の岸昌知事は「航空機の離発着にあたっての飛行経路等は今後変更しない、それが合意の前提になっていますので、その前提を変えてもらっては困る」と述べているのである。つまり「海上ルートを守る」「陸上は飛ばない」という約束が、空港建設の大前提であったことは地元自治体・住民はもとより、府当局・府民の共通の合意であったことは明白な事実である。

 ところが運輸省は、「見通しが甘く、結果として当時の説明と異なる事態を招いていることは遺憾」で済まし、「基本的考え方は今後も堅持」と述べて関空建設の原点を蹂躙する「陸上ルート」の道を切り開こうとしている。また、府当局も、地元との「合意」形成の経過を充分承知し、自らもこの「合意」に責任をもつ立場にありながら、厳格にこれを守る立場を貫かず、事実上運輸省の立場に同調していることは極めて遺憾である。
 私たちは、関空建設を巡る経過や関空建設そのものに係る大前提、その核心である「海上ルート堅持」の合意を前提にしないで、大阪府が専門家会議に運輸省の見解の検討を委ねる権限はなく、それに背いてことをすすめているその責任は重大だと考える。同時にいよいよ運輸省の「陸上ルート」提案の検討に直面している専門家会議の論議が、自主的な判断に基づき、改めて「地元合意」尊重の立場にたってすすめられることを強く期待するものである。



2、運輸省の「海上ルートは限界」という主張について

 私どもは、飛行ルートについて、技術の進歩をふまえて一定の見直しを行うことを勿論否定するものではない。しかし、その際も先に述べたとおり、大前提である「海上ルート」の確認に基づいてあらゆる角度から行うのが当然のことと考えるものである。
 そもそも「海上ルート」で安全なのか、全体構想完成時の26万回は可能なのか、大阪湾上の空域にそれだけの容量があるのかなどの問題点は、当初から各方面から指摘され、私たちも強く主張した点である。
 これに対して運輸省は「ニューヨークでは100万回、サンフランシスコ地域でも60万回もこなしている。将来運航回数が増えても一元管制等も考えており、安全に飛ばすことは可能」「空域の容量としては充分にある」と公言した。(1984年5月15日参院運輸委)また大阪府も前掲パンフ「関西国際空港はいま…」で「開港時13〜16万回」「最終26万回の離発着が可能となります」と疑問の余地なく府民に広く宣伝した。

 ところが、運輸省は@コンピューター技術開発とA航空機需要の予測以上の増加の二つを理由に「12万回で限界」(勿論滑走路一本で)と言い出した。

 しかし、この説明は、「大阪湾上の空域は26万回のフライト可能な容量あり」と説明されてきた地元・府民を到底納得させるものではない。
@運輸省自らが「総合的な取組みについて」(6/16)でも管制技術の一層の開発によって航空交通容量の拡大を図ると述べているように、コンピューター技術の発達は管制容量の増大につながるものと思うのが常識だからである。もし技術進歩で「減少」したのが事実とすれば、それ迄は全く科学的根拠もなく、危険な飛行を行っていたことを自ら告白することになるのではないか。
A需要予測を上回ったことが事実としても、離発着可能といった26万回の半分にも達していないのに「処理出来なくなった」というのは空域容量の問題なのだから全く説明になっていない。(滑走路が一本だから限界だと言ってるのではないのである)

 私どもは去る6月25日、大阪府知事への「申入れ書」を提出したさい、「26万回の離発着可能と言った根拠資料」を求めたが、「大阪府にはない」との回答であった。「では運輸省に資料要求を」と要請したが、その結果は、「運輸省にもない」との回答であった。(7月7日)
 しかし、これは全く常識では考えられないことである。海上飛行経路は、3点セットの一つである「空港計画案」に、「開港時における技術進歩を現時点において可能な範囲で予測して計画する」(P45)と明示されており、その段階で基礎資料もなく「26万回」と説明するはずがない。ましてや国会で答弁するはずがないと思うからである。もし、根拠となるデーターもなく答えていたとしたら、地元・府民は勿論、国民・国会をも侮辱するものであり、「ペテン」と言われても然るべき態度ではないかと考える。

 私たちは、運輸省「陸上ルート」案の検討に入る前に、“大阪湾上空は、他空港の飛行を考慮にいれても、関空離発着26万回を可能とする容量を持っている”とした根拠の関係資料を運輸省に要求し、これを科学的に分析するなど、空港建設の大前提である「海上ルート」を厳格に守る立場で、問題点の打開に向け検討するのが筋ではないかと考えるものである。

 専門家会議の各委員が、運輸省・大阪府の住民との約束をないがしろにする姿勢にくみすることなく、自主的・科学的立場を貫かれ、府民、地元住民が納得できる積極的な検討を引き続きすすめられることを心から期待するものである。



       

1997年7月23日     陸上ルート反対三者連絡会議     

大阪労連阪南地区協議会
公害のない住みよい泉佐野をつくる市民連絡会
日本共産党阪南地区委員会