<しんぶん赤旗、2005年1月7日付け、大阪のページ>

関空2期工事  05年度整備費

府は負担増 福祉後退の恐れ

需要拡大の見込みなく、300億円計上・・・・・

 近く審議が始まる新年度政府予算案。注目される一つが関西国際空港二期事業の施設整備費です。「むだな公共事業」と批判が強く、財政制度等審議会が「施設整備費の計上は国民の理解は得られない」としました。にもかかわらず、谷垣禎一財務相と北側一雄国土交通相が「満額計上」で合意した経緯があります。二期工事の続行は大阪府などに新たな負担をもたらし、いっそう福祉が後退するのではと不安は強まるばかりです。     関西総局 平岡賢記者

"黒字経営"が条件

 予算案に計上された施設整備費は三百億円(国費二百億円)。二本目の滑走路と誘導路などの建設費です。

 両大臣が「満額回答」の条件として合意文書にかかげたのは「安定的な経常黒字の確保」です。確かに関空会社は、今年度九月の中間決算で初の黒字となりました。
 しかし、内実は政府の補給金四十五億円(年間九十億円)がなければ赤字なのです。

 合意文書で目標にした発着回数年間十三万回も、実現の見通しは暗いものです。〇三年度は約十万回、今年は十一月までで、九万四千回。これが好転する気配はなしです。もともと現滑走路は十六万回の発着能力があり、たとえ、目標の十三万回を達成したとしても滑走路は一本で十分です。

 高まる「ムダ」批判をかわそうと、政府がひねりだしてきたのが、ことし四月からの大型機の伊丹空港乗り入れの段階的禁止です。対象になるのは、伊丹−北海道、沖縄への長距離便と一部の東京便。政府は「騒音対策」といいますが、国内線の減便が続く関空への救済策との見方がもっぱらです。しかし、これも、航空各社が〇六年の神戸空港開港を見込んで神戸−札幌、沖縄便の就航を固めています。「救済策」に疑問符がついています。

財界の要求に応えた

 「国民の理解は得られない」という財政制度等審議会の意向表明もあって、施設整備費をめぐっては、予算案計上にきびしい見通しが一般的でした。
 しかし、ふたを開けてみれば満額回答。これは当初から予想されたこと。北側国交相は就任早々「二本目の滑走路についてはぜひ実現を進めていきたい」と二期工事推進の大キャンペーンをはっていた財界の願いに全面的にこたえました。

 キャンペーンの推進母体は昨年二月に結成された「関西三空港懇談会」。三空港とは関空、神戸、伊丹です。同懇談会は、座長が関経連会長で、国土交通省航空局長、大阪航空局長、大阪・兵庫両知事、大阪・神戸両市長がメンバー。国、財界が一体です。「満額回答」に関西経済団体連合会は「誠に喜ばしい」とコメントまで発表し、「訪日観光客の倍増をめざす」とぷちました。

 たまらないのは府民です。それでなくても府は、二期事業に今年度までに利子込みで千四十五億円、さらに来年度からの二年間に約百二十五億円を負担します。五兆円近い借金をかかえ沈没寸前の大阪府財政に重くのしかかります。

 日本共産党府議団の宮原たけし団長は、「国としての航空政策もなく、当面必要性のない二期事業に巨額の予算を注ぎこむ一方で、大阪府はわずか六億円の生活保護家庭(約二十万人弱)への夏・冬の一時金を廃止しました。さらに、増えても数億円の府立高校授業料の減免制度改悪を検討しています。こんな逆立ちした財政運営を進める国政と府政の転換こそ必要です」と語っています。