松浪議員問題 *新聞報道記事*


【毎日新聞、2003年5月22日付け】

松浪議員、辞職せず

    秘書給与問題 衆院政倫審で陳謝

 衆院政治倫理藩査(奥野誠亮会長)は21日、保守新党の松浪健四郎衆院議員が暴力団の関係会社から秘書給与の肩代わりを受けていた問題について、公開で審査した。野党側から議員辞職を迫られている松浪氏は「政治不信を増幅させたことに心からおわびする」と陳謝したものの、「精進を重ねて国民の負託に応えたい。来るべき衆院選で信を問いたい」と述べ、次期衆院選まで議員にとどまる考えを改めて示した。(5、24面に関連記事)

 松浪氏によると、秘書給与の肩代わりを受けたのは、1人目の秘書が97年3月から7月までの5ヵ月間、2人目の秘書が97年9月から98年1月までの5ヵ月間で、計250万円分。97年12月に会長が暴力団組員であると知人から聞いて、給与提供を断りに行ったものの、すぐに受け入れられなかったと釈明した。

 また、組員が指名手配された談合事件をめぐり、98年3月に組員の依頼に基づいて捜査状況を大阪府警に照会したことについて、@粗員から具体的な説明はなく、あくまでも事件の参考人と認識していたA府警側も電話した際に組員が容疑者とは言わなかった−−と
述べ、「捜査状況の照会はしていない」と話した。政治資金収支報告書の修正が遅れた理由については「熱心な支援者である会社会長との約束を破ることになり、葛藤(かっとう)していた」と説明した。
                 【犬飼直幸】

(毎日新聞、2003年5月22日付け、1面)


政倫審で松浪氏     開き直りに批判強く

野党 参考人招致迫る構え

 保守新党の松浪健四郎衆院議員は21日の衆院政治倫理審査会(奥野誠亮会長)で、暴力団関係者からの給与肩代わりについて事実関係を大筋で認めたものの、離党や議員辞職には言及しなかった。与党は政倫審の弁明で、幕引きをはかりたい意向だが、暴力団との癒着関係が白日の下にさらされても、あくまで国会議員に居座る鈍感さには、与野党問わず批判が渦巻いている。 【桜井茂、中川佳昭】


 「行動で態度を示したいというのなら、議員を辞めるのが最もわかりやすい方法ではないか」
 90年11月、衆院本会議場で、壇上の松浪氏からコップの水をかけられた民主党の永田寿康氏は、政倫審での質問でこう迫った。松浪氏は[そういう声があることは存じているが、有権者の皆さんのことを湾えると、次の選挙を通して問うのが本来の婆だ」と述べ、議員辞職要求を突っぱねた。

 松浪氏の狙いは「国民へのおわび」を強調して、「みそぎ」にしたいという点に尽きた。自民党の国対幹部も審査終了後、「公開の場での審査にしっかり答えていた。これで十分だ」と述べ、松浪問題にフタをする意向を示した。

 しかし、これで一件落着とすることには、与党内にも不満がある。自民党の佐田玄一郎氏は審査会で「我々は高い倫理性を求められている。本当に軽率だ」と松浪氏を批判。同氏の所属する保守新党の熊谷弘代表でさえ「党が消滅するぐらいの厳しい状況だ。政治不信を招く一因となったわけで、その重みを松浪さんは猛省してほしい」と突き放した。

 野党各党は「新事実によってこれまでの弁明も崩れており、辞職に値する」(野田佳彦・民主党国対委員長)、「松浪氏が暴力団関係者と一緒の世界に生きてきたことがますます明らかになった」(志位和夫・共産党委員長)として松浪氏の議員辞職を一斉に要求した。野党は引き続き松浪氏の衆院予算委への参考人招致を迫り、揺さぶる構えだ。


松浪健四郎議員弁明(要旨)

 地元の私設秘書給与、月25万円の肩代わりを大阪府貝塚市の建設会社から10力月間受けていた。この会社の関係者が選挙前から応援してくれたことが姶まり。最初の秘書が97年3月から5ヶ月間、2人目の秘書が同年9月から5ヵ月間、合計250万円を肩代わりしてもらった。

 同年12月に知人から「会社の関係者が暴力団関係者らしい」と教えられた。給与提供を断りに行ったが受け入れられず、98年1月に秘書が退職するという理由で中止された。

 同年3月7日、この人に東京・渋谷で会った。大阪府警刑事の名刺を見せられ「事情を聴きたいと連絡を受けた。どうしたらいいか」と問われた。刑事に電話を入れると、「談合でその人が事情を知っている。来るように促してほしい」と言われ、知人に伝えた。

 その人が同3月末に怒鳴り込んで来て「秘書給与提供を断ってきたのは、談合事件の情報を事前に入手していたためだ」と言った。同4月、後援会の有力者から仲介すると連絡をもらい、会談した。秘書給与返却を申し入れたが「返さなくていい」と言われた。

(毎日新聞、2003年5月22日付け、5面)


松浪問題  一件落着には到底できない

 かつて暴力団員と関係があったことが明らかになった保守新党の松浪健四郎衆院議員が21日、衆院政治倫理審査会で弁明し、各党の追及を受けた。

 審査会の開催は松浪氏の要請によるもので、非公開が原則の審査会は同氏の希望で報道陣に公開された。

 弁明では、これまで明らかになった事実関係を大筋で認めはしたものの、関係のあった暴力団員(当時)をはじめ関係人物はすべて匿名としたばかりか、説明に不自然な点も多かった。核心の部分になると「軽率だった」「だらしなかった」「申し訳なかった」と謝罪するばかりで、真実の究明とはほど遼いものだった。
 野党の議員辞職要求には否定し続けた。

 松浪問題のポイントは3点ある。私設秘書給与を肩代わり(合計250万円)していた建設会社の実質経営者が、暴力団員と分かった後もおよそ2ヵ月間肩代わりを受け続けていた。
 この暴力団員が談合容疑で大阪府警から指名手配されている最中に東京都内で直接会って、依頼に基づき捜査状況を同府警に電話で照会した。
 そして、秘書給与肩代わりは政治資金の寄付にあたるのに、発覚直前まで収支報告書に記載しなかった。

 松浪氏は、肩代わりさせた当初暴力団関係者とは知らず、後に知人から暴力団関係者らしいことを知らされたが、確信を持てなかったことや、大阪府警への電話は捜査状況の照会ではなかった、などと弁明している。

 法を定める国会議員が反社会的存在の暴力団員と黒い関係を持ったのである。しかも秘書給与肩代わりというカネの関係である。これだけで国会議員としてふさわしくない行動といえる。
 その上250万円の寄付を報告しなかったことは、政治資金規正法違反にあたる。
 国会の権威を大きく傷つけ、国民の不信を深めた。

 松浪氏や所属する保守新党は、審査会での弁明で、説明責任を果たしたとして一件落着させたい意向だといわれる。とんでもない話だ。この日、野党側からは3点以外の疑惑も指摘されている。

 弁明したからといって、みそぎが済んだなどとするのは本末転倒である。審査会はこれまで疑惑を持たれた議員のみそぎの場として扱われてきた感があった。本来の趣旨を曲解している。議員の駆け込み寺ではないのである。
 所属する保守新党の対応も、松浪氏を守ることに腐心しているように見えて、政界浄化の姿勢が感じられない。これでは松浪氏だけ,でなく所属政党も国民の不信を買うだろう。
 松浪氏本人や所属政党に議員辞職の意思がない以上、野党が提出している議員辞職勧告決議案を本会議に上程して採決すべきである。決議案を棚上げしたままにすることは、国会に自浄機能がないことを意味する。国会が問われているのである。

(毎日新聞、2003年5月22日付け、5面)