【朝日新聞、2003年5月22日付け1面】
松浪氏、辞職を否定
別の企業献金も認める
衆院政倫審
松浪健四郎衆院議員(保守新党)をめぐる秘書給与肩代わり問題で、衆院政治倫理審査会は21日、公開審査をした。松浪議員は、暴力団組員が実質経営する会社から秘書給与を受け取りながら政治資金として届け出ていなかった事実を認め、「深く反省する」と弁明したが、議員辞職しない考えを改めて示した。(5・31面に関係記事)
冒頭の弁明で、松浪議員は、本件以外に暴加団関係者と一切関係はない」とした。しかし質疑の中で、児玉健次氏(共産)が同議員の政治資金収支報告書に、別の暴力団関係企業からの献金が記載されていることを指摘。同議員は「申し訳ない。しかるべき対応をしたい」と認めた。
弁明では、@97年3月から98年1月まで大阪府貝塚市の建設会社から私設秘書の給与計250万円を提供されたA97年末に、知人から同社関係者が暴力団組員と聞いたB98年3月、組員から事件について相談を受け、警察側とも電話で話した−−などと説明した。
一方、松浪議員は審査後、記者団に「次の総選挙で国民の信を問う」と表明。保守新党は幹部が協議し、「十分な説明をした」(熊谷代表)として離党や議員辞職を求めない方針を確認した。
【朝日新聞、2003年5月22日付け2面・社説】
これが与党の正体か
松浪議員
暴力団組員とつきあいがあったことを認めた。秘書給与を肩代わりしてもらっていたことも認めた。指名手配中の組員の件で警察に電話したことも認めた。
保守新党の松浪健四郎衆院議員は、それでも辞職しないと言い張る。この程度のことは「不注意でお騒がせした」と反省し、わびれば済むと思っているようだ。
暴力団関係者とのうわさを聞いたが、確認できなかつた。その組員から刑事の名刺を見せられ、相談を受けたが、まさか被疑者だとは思わなかった……。
衆院政治倫理審査会での松浪議員のこうした弁明には、議員辞職を求めている野党はもちろん、自民党や公明党の質問者からさえ「違和感を感じる」「非常に不目然」といぶかる声があがった。
ところが、与党は首をかしげておきながら、松浪議員に辞職を求める動きは一向に見せない。保守新党に至っては、今回の政倫審で質問に立つことさえしなかった。
暴力団との関係など大した話ではない。そんなことで、いちいち議員の資格を問われてたまるか。政倫審でつらい思いをしたのだから、お仕置きはもう十分だ。
与党はこぞって、そう考えているとしか受け取れない。
松浪議員が居座り続けるようなら、昨年相次いで議員を辞職した加藤紘一、辻元清美、田中真紀子の各氏はさぞ悔しかろう。逮捕後も議員を辞めない鈴木宗男、坂井隆憲両被告は意を強くするに違いない。
政倫審の前日、東京地裁はKSD汚職事件で村上正邦元労相に懲役2年2ヵ月の実刑を言い渡した。
その判決は、国会議員を「全国民の代表として国家意思の形成に携わるべき地位」にあって、「高度の倫理性と廉潔性が求められている」と定義している。
実際はどうか。
国会議員の在職時にしたことで有罪判決を受はた人は、ここ10年で11人にのぼる。国会は毎年のように逮捕者を出しているのである。これでは「とりわ倫理性と廉潔性を欠いた集団」と国会議員を定義し直した方がよいくらいだ。
「政治家はカネを欲しがる生き物。献金をやめてしまうと強盗さえしかねない」と経団連幹部が発言したのは、10年前のことだ。自民党ともめて経団連が陳謝した。
だが、その後の「国会議員の犯罪」の多さを見れば、謝る必要などなかったのではないか、と思えるほどだ。
政治家はいくら金があっても足りないらしい。企業・団体献金の規制は進まないどころか、逆行の動きさえある。しかも、企業献金規制の見返りに導入された政党交付金はがっちり握ったままだ。
このまま、与党が松浪議員をかばい続けるなら、「政治家は献金をやめようとやめまいと、暴力団にたかりかねない」とまで言いたくなる。
【朝日新聞、2003年5月22日付け5面】 *後日収録します
【朝日新聞、2003年5月22日付け31面】
辞めぬのもスポーツマンシップ
松浪節、弁明に終始
衆院政倫審 野党怒り与党距離
「ネバーギブアップもスポーツマンシップ」「世界平和のために働く」。暴力団が実質的に経営していた会社から秘書給与を受け取っていた松浪健四郎衆院議員は21日の衆院政治倫理審査会で、独特の表現で辞職を否定した。野党委員は怒り、与党も、受け入れつつ距離を置いた。大阪の地元支持者も揺れている。
社民党の山内恵子氏は、アマチュアレスリングの元選手だった松浪氏が辞職しないことを皮肉った。「あなたにとってのスポーツマンシップとは?」。松浪氏は答えた。「潔しとするのがスポーツマンシップかもしれませんが、ネバーギブアップ(決してあきらめない)もスポーツマンシップ」
共産党の児玉健次氏は「暴力団関係者と日常的に付き合っていたという意味で疑惑は解明された。辞職が唯一の道だ」と話した。
「相手が暴力団と確認する方法がない」。審査会委員に松浪氏は、繰り返し反論した。民主党の永田寿康氏は「そんな言い訳が通用するはずがない」とあきれた。
一方、公明党の漆原良夫氏は「松浪氏なりに一生懸命弁明したし、一応の事実関係は了解した」と評価。それでも、野党が出している辞職勧告決議案については「これからの議論」と、反対の意思表明をしなかった。自民党の佐藤静雄氏は「弁明が議員や国民からどう評価されたかを見極めて自ら進退を判断するだろう」と冷ややか。
神妙な面持ちで弁明に立ち続けた松浪氏は国会を去り際に、報道陣に言い切った。「世界の平和と国民の幸せのために最大限努力させていただきたい」「次の選挙で国民の信を問いたいと思います」
姿見せず地元不満
松浪氏の選挙区、大阪19区は府最南端にある。週末には必ず戻って街角で演説していたが、秘書給与の肩代わり問題が発覚した4月中旬以降、姿が見えない。泉南市の地元事務所の秘書は「ここには立ち寄っていない」と繰り返した。
支持者らにもほとんど連絡はないようだ。支援者の泉南市議の一人は、問題発覚の数日後に「迷惑をかけた」と松浪氏から電話を受けたが、それから連絡はない。政倫審で松浪氏が議員辞職を否定したことについて「本人の意思を尊重したい」としながらも、「地元でもきちんと事情を説明するように求めていきたい」と不満を漏らした。
泉佐野市のタオル製造業者(60)は、松浪氏のはっきりとものを言う市政に共感し、3年前から後援会に入っている。だが、この問題での対応にはがっかりしている。「落ち度を認めながら、ずるずると議員として居座り続けるのは納得できない。これでは次の選挙でお願いされても応援できない」。一方、阪南市の後援会「阪南松浪会」の会長を務める芝野正和・同市議は「隠し立てせずに、悪いことも含めて事実関係を認めたという点で今後も信頼したい」と理解を示した。
国民に不信感 与党へ痛手に
加茂利男・大阪市立大教授(政治学)の話
このままで終わってよいのか疑問が残る。政治倫理審査会は政治家の「みそぎの場」になりがちだが、本来は、国会がルールや倫理を自ら厳しく問う「自浄の場」であるべきだ。巨大与党に押されて、野党も迫力を欠くようにみえるが、最近の有権者の目は厳しい。政治的な思惑から問題を軽く済ませれば国民の不信感に火をつけかねない。長い目で見て、与党にとって大きな痛手になりうることを知るぺきだ。